お医者さんでもらった処方箋。その日のうちに調剤薬局に持って行けばよいのですが、ついつい後回しにしてしまって、気づいたら数日経過していた。そんな場合に参考にしていただくコラムです。処方箋の有効期限や、期限が切れた場合の対処法などについて記載しています。
こんにちは。合同会社YAKUDACHI代表社員の鈴木重正です。
私は普段、薬局のオーナー兼薬剤師として自身の薬局で働いています。私の薬局にもたまに発効後数日を経過した処方箋を持ちこまれる患者さんがいます。あまり処方箋に有効期限があるということは知られていないのか、期限切れであることを伝えると驚かれる方も中にはいます。
本来の有効期限は4日間
処方箋の有効期限に関しては保険診療のルールである
” 保険医療機関及び保険医療養担当規則 ”に下記の通り規定されています。
(前略)
三 処方せんの交付
イ 処方せんの使用期間は、交付の日を含めて四日以内とする。ただし、長期 の旅行等特殊の事情があると認められる場合は、この限りでない。(以下略)
保険医療機関及び保険医療養担当規則第 20 条
上記のように特殊な事情が認められない場合には4日間が期限です。この4日間というのは発効日を含み、しかも休日その他も含まれますので、ちょっとした連休前に受診した場合には、処方箋発行日くらいしか調剤を受けるチャンスはありません。
有効期限の延長は認められないことが多い
調剤を受けずに処方箋発行日から4日以上経ってしまった処方箋の扱いですが、以前は「延長」ができました。これは薬局の窓口に有効期限の切れた処方箋を持ちこんだ場合に、その薬局の薬剤師が処方箋発行医療機関に対して疑義照会(*)という扱いで、処方箋の有効期限の延長を依頼していたものです。ただし、処方箋の有効期限切れは疑義とは通常認められないため、最近では医療機関からも延長を断られることが多くなりました。また、有効期限が例え延長されたとしても、薬局側としては本来無効である処方箋を使って保険請求しなくてはならないため、保険者側から査定された場合には、保険が適用されなくなる恐れがあります。
(*)疑義照会とは処方箋中に疑わしい点があった際に、薬剤師が処方医に対して行う問い合わせ。薬剤師の権利かつ義務であり、薬剤師は疑義の生じた処方箋をその疑義が解消することなく調剤することが認められていない。
なんで有効期限の延長はダメなのか
処方箋の有効期限は4日と決められている、その理由は監督官庁の厚生労働省によると以下の通りです。
「処方せんは、医師が処方日現在の患者の症状を考慮して 必要な分の薬について記載して交付するものであり、交付の日から日数が経 過した場合には、診察した当時からみて患者の症状が変わり、処方薬がその 時点では安全かつ有効なものとはいえなくなるおそれがあるため、適正な日 数として4日以内と定めている。
薬の処方せんの使用期間の徒過の防止について(概要) 平成 22 年3月 30 日 厚生労働省見解
たしかに風邪薬のような急性期症状の場合に、お医者さんが「5日くらいでなおるだろう」と思って処方箋発行してから、5日後に調剤薬局に処方箋を持ちこんだ場合、既にだいぶ良くなっているはずの患者さんに5日分の風邪薬を(保険適応して)処方するのはよくないのはわかります。ただ、毎月、高血圧で受診している患者さんがいつもの薬が処方されている処方箋を有効期限が切れてから薬局に持ちこんだ場合などは、結局、飲むべき薬であるので、期限延長してもよいと思われます。
つまり、監督官庁としては一律にOKとはできないし、絶対NGと断言するとよくない影響を社会に与えるので、日本的に文章では「ダメですよ」くらいのトーンにしておいて、現実は一部黙認、といったところでしょうか。
処方箋の再発行は可能
処方箋を再発行することは可能です。ただし、薬局に持ちこんだ処方箋を医療機関に持ち帰り、場合によっては再受診し、処方箋を再発行してもらうことになります。この場合、厳密には健康保険の適用とはならないため、全額自己負担での受診、再発行となることがあります。なお、薬局では再発行された処方箋であっても調剤は初めてなので保険適用される場合が多いですが、医療機関が処方箋発行を自費扱いとした際に、保険番号の記載がないなど、いわゆる自費処方箋として再発行した場合には、薬局での調剤も自費(=保険適応なし)になります。
発行当日調剤を受けずに連休に入った場合などの対処法
前述している通り、処方箋の有効期限は発効日を含めて4日間です。土日祝日全て含めて4日間なので、連休前に受診した場合など、処方箋発行当日に調剤を受けずに連休に入った場合などは、連休明けに有効期限が切れてしまいます。そこで、連休中に開局している薬局を探すこともあるかと思いますが、そういった時には厚生労働省の医療機能情報提供制度が便利です。各都道府県の医療機能情報制度のリンクがあるので、日時を指定して開局している薬局を探すことができます。ちなみにですが、ドラッグストアに併設されている調剤室は、ドラッグ売り場が365日営業でも、調剤室は土日祝休みだったりするので注意が必要です。一般的には日曜祝日に開局している薬局は大きな駅の駅前にある薬局が多いです。またイオンはショッピングモール内に併設しているほとんどのイオン薬局が年中無休のため、とても便利です。
無料の薬局料金比較アプリ”kusurine”でも当日営業している薬局を探すことができます。現在地や最寄り駅などからも営業している薬局を探すことができるので是非ご利用ください。
薬局M&A、薬剤師独立支援の合同会社YAKUDACHI代表社員 社長
大手調剤薬局チェーンにて薬局現場勤務、事業会社取締役、ジェネリック医薬品メーカー立ち上げの後、グループ全体のM&Aを担当。M&A業界では稀有な薬剤師M&A担当者としてソーシングからPMIまで一貫してリード。
2019年、M&Aを利用した薬剤師の独立支援を目的に合同会社YAKUDACHI設立。また、自分自身もM&Aにより薬局を譲受し調剤チェーンより独立。北海道千歳市にすずき薬局開設し、管理薬剤師登録。
プライベートでは2男1女の厳しく、頼られる父親像を思い描きながらも、家庭は嫁と娘に支配されている。
幼少期からの夢だった大型犬を飼いたくて、現在、稟議申請中。