コラム「薬局によってこんなに違う手数料(=技術料)とは」でご紹介した通り、同じ薬が処方されていても、処方箋を持ちこむ薬局によって料金は変わります。つまり、安い薬局と高い薬局があります。今回はその理由についてご紹介します。
こんにちは。合同会社YAKUDACHI代表社員の鈴木重正です。私は普段、薬局経営者兼管理薬剤師として薬局を運営しています。薬局の料金は、複雑でわかりづらく、「kusurine」のような薬局料金比較アプリでも使わない限りは、事前に薬局ごとの料金を知ることはできません。
地域医療を守るために、薬局の料金に差がついている
皆さんご存じの通り、薬局の料金は国もしくはその周辺団体によって決められています。よって個々の薬局が勝手に料金を決めることはできません。
この料金設定の前提にあるのは
・よりよい医療を実現する
・地域の医療を守る
・フリーアクセス、皆保険制度を維持する
といった思想かと思います。
スーパーやコンビニと薬局の違い
スーパーマーケットやコンビニエンスストアであれば、商品の値段を自分たちで決めることができますが、薬局の場合は国によって料金が決められていて、自分たちで勝手に料金設定することはできません。ただし、”国が求める薬局像”に近づくと高い料金が設定されるような仕組みになっています。
国の求める薬局像とは
個々の薬局は自分たちの調剤報酬を上げるために努力します。例えば現在、高い調剤報酬を設定できる薬局としては
・ジェネリック医薬品を多く使用していて医療費高騰の抑制に貢献している薬局
・多くの品目を在庫していて、地域の複数の医療機関の処方箋を受け付けできる体制を取っている薬局
・患者から”かかりつけ薬局”として指名されていて、複数の医療機関の処方を横断的に監査し、不要もしくは重複した処方を改善提案できる薬局
などがあげられます。
過疎地域の医療も守らなくてはならない
薬局は医療機関のため、儲かる地域だけにあれば良いわけではありません。東京や大阪などの大都市圏は人口も多く、一つの薬局で多くの処方箋を扱い、つまり大きな売上となることも多いですが、医療が必要なのは都市部だけではなく、人口の少ないエリアでも医療を必要としている人はいます。むしろ、過疎地域こそ病気の高齢者の割合は高いと考えられるため、そういった地域の医療を守る必要があります。
町や村に一軒しかない薬局を守るため
都市部の利用者が多い薬局を前提とした調剤報酬(料金設定)はそのまま、過疎地域の薬局に適用すると経営が成り立ちません。そこで、調剤報酬に様々な条件で差をつけて都市部の薬局が儲かりすぎず、過疎地域の薬局がやっていける、そんな報酬設計としています。
薬局M&A、薬剤師独立支援の合同会社YAKUDACHI代表社員 社長
大手調剤薬局チェーンにて薬局現場勤務、事業会社取締役、ジェネリック医薬品メーカー立ち上げの後、グループ全体のM&Aを担当。M&A業界では稀有な薬剤師M&A担当者としてソーシングからPMIまで一貫してリード。
2019年、M&Aを利用した薬剤師の独立支援を目的に合同会社YAKUDACHI設立。また、自分自身もM&Aにより薬局を譲受し調剤チェーンより独立。北海道千歳市にすずき薬局開設し、管理薬剤師登録。
プライベートでは2男1女の厳しく、頼られる父親像を思い描きながらも、家庭は嫁と娘に支配されている。
幼少期からの夢だった大型犬を飼いたくて、現在、稟議申請中。